転生

 今日はやけに眠い。わたしはあくびした。今は1人のわたしだが、1年前までは夫がいた。その夫も、1年前に交通事故で死んだのだが。ぼーっとしていてもつまらないので散歩に行くことにした。
 途中、1匹の猫を見た。その猫はわたしによってきた。会ったこともない猫なのに、やけに慣れていた。なでてやっているうちに、夫の春哉と猫が重なって見えた。きっとこの猫は春哉の生まれ変わりなんだ。そう思ったわたしはその猫を家に連れて帰った。
「今日からここがあなたの家よ」
 首輪もしていないし、野良猫だろう。
 飼い始めて数日後、わたしが留守の間に家が火事になったのだ。家はほとんど燃え尽きていた。はっと、私は思い出した。
「猫ちゃん!」
 その後聞いた話だと、出火の原因はうちの猫らしい。隣のおばさんが窓からうちの猫をながめていると、猫がガラス玉を窓際までくわえてきて、太陽の熱が新聞紙に当たるように配置し、窓を開けてをのまま逃げたと言っていた。
 でもわたしは信じない。
 また数日後、家がなくなったわたしはお母さんたちの家に帰っていた。今日もまた、眠い。また散歩に行こう。猫がいるかもしれない。前の猫は帰ってこなかった。
 散歩に出たわたしは、工事中のマンションのうえを何気なく見て驚いた。前の猫がいたのだ。
 鉄骨を持ち上げる、クレーンを操縦する人にかみついていた。その人は大の猫嫌いで有名なてっちゃんで、驚いて操縦を誤った。鉄骨はわたしの真上からものすごいスピードで落ちてくる。たぶん わたしはこのまま死ぬのだろう。ただ1つ、死ぬ前にわかったこと。あの猫は春哉の生まれ変わりではなく、春哉が死んだのと同じ、1年前にわたしが殺した稲子の生まれ変わりだ。